脳内模写

言葉で描ける考え事の断面。

生きる意志

汚い。僕は汚い存在である。しかし汚くとも、下品であっても、生きるのである。

そもそも生物というものは汚い。動物に宿っている要素は数学的な美しさよりもカオティックな禍々しさの方が優っている様に思える。反面、植物は美しいし清潔さを感じる。動物の様に欲にかられて愚行を行うことはない。ただそこに在って、それだけで充分ことを成している。動物は違う。喰らわねばならぬ。排泄せねばならぬ。動かねばならぬし怠けねばならぬ。

僕は物心付いた時にまず食事を拒んだ。排泄も睡眠も拒んだ。結局は抗いきれなかったわけだが。僕にとってそれらは純粋に気色の悪い現象だった。穢れるのを嫌った。あれは僕に対する暴力だった。「僕」という主体の意思に関係なく襲ってくる得体の知れない怪物なのだ。幼い頃の僕はその怪物と一人で戦っていた。

僕はあまり物欲の無い子供であった。代わりに好奇心があった。だから宿題をすれば小遣いを増やしてやるなんていう親の提案には全く乗らなかったし、国語の授業中でも気になる事があれば地図帳を開いたりしていた。僕は好奇心だけで生きている。肉体的な欲求(食欲、睡眠欲、性欲、物欲)は副次的な物で、好奇心を満たす事が至上命令なのである。この世の諸行無常には関心がないのだ。揺ぎの無い知識と経験つまり情報のみが僕の栄養になる。


僕は決めたのだ。どんなに汚らわしい人間になろうと、どれだけ人に後ろ指をさされようと、たった一つの美しいものを夢見て生きるのだ。