脳内模写

言葉で描ける考え事の断面。

くしゃくしゃの菓子パン

ふと思い出したので書き残しておく。

僕の幼い頃から父は日本中の登山へ連れて行ってくれた。父は山を仕事にしている。日本のみならず世界中を飛び回っていた。 父が海外から帰るたびに母と空港へ迎えに行ったことを覚えている。もちろん日本中の登山で見せてくれた景色も覚えている。

そんな父は山に行くたびに多めの食料を持っていく。登山用のザックにぎゅうぎゅう詰めで入れられたパンはくしゃくしゃになる。 一緒に登っているときはいつもくしゃくしゃの菓子パンを家族で食べていた。その度にせっかくのキャンプなんだからこんな貧乏くさいパンを食べたくないなと思うこともあった。

父が仕事で山に行ったあとは決まって食卓の上にたくさんの菓子パンが並べられる。もちろん全部がくしゃくしゃだ。「えーっ、もう少し荷物の詰め方なんとかならないの?」と何度も聞いたけど、登山用ザックが大きくなるわけでもなく不必要に大きなザックを持てるわけでもなく、山のあとは母も僕も弟も父自身もみんなでくしゃくしゃになった菓子パンを食べる。

ついさっき、友達がおにぎりを潰したと言って部屋から出てきたときにふとこれを思い出した。 見てみるとおにぎりは見事にぺったんこだったけどまだ食べれそうで、いつも父が持って帰ってくるパンのことを思い出したのだ。

何気ないことだけどふと浮かんだこの懐かしい記憶を忘れたくないなと思い、書き残しました。