人類の未来
文明が発達するにつれ、個人が自らの生存の為に費やす精神の割り当ては減り、代わって群れる事で相互の安全を保障する為に互いの精神を交わらせる。こうして集団としての生存率を高め、個体から群体へと変容する。人類の歴史において意志疎通の為にまず非言語のボディランゲージ、後に言葉が生まれた。
言葉は時空間を超えて、過去の出来事を未来に、遠くの出来事をあたかも目の前で起こった事の様に伝える事を可能にした。
そして次に文字が生まれ、思念は人類から独立して保存されるようになった。こうして時空間を超えて概念の共有、交信が可能になった。壁画、手紙、狼煙、電信により交信は加速して行く。マスメディアはそれらの量質転化の結果誕生し、思念の共有という精神の一体化が可能になった。
マスメディアとは絵画、文学、音楽、演劇、書籍、新聞、映画、ラジオ、テレビなどを指す。やがて情報通信端末の発達により、交信と共有の一体化した電子掲示板やSNSが発生する。こうして人間の精神の一体化はいよいよ加速する。
いずれ情報通信端末のインターフェイスは人体と一体化し、テレパシーによる思念の共有が可能になるだろう。いよいよ人間精神の相互干渉は極まり、もはや人類が個である事を喪失する。完全に群体となった人類は複雑ネットワーク的に接続され、ポスト人類となる。つまりは技術的特異点である。
複雑ネットワークは現実世界のあらゆる事象に現れている。例えば脳細胞のニューロンの構造、動物の血管や木の枝、道路網、天体の配置などである。ポスト人類において精神がこのように接続される事で知性は加速し、やがて物理法則、宇宙の原理を完全に理解する事が可能になるであろう。
ポスト人類はアーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅」「幼年期の終わり」、神林長平「帝王の殻」「魂の駆動体」、士郎正宗「攻殻機動隊」、「新世紀エヴァンゲリオン」、「MATRIX」などに於いて予言されている。現代人類の知性を遥かに超えた存在であるポスト人類は精神世界の中で生きる事となる。海で生まれた生物が陸を目指した様に、鳥類が空を飛ぶ様に、人類が宇宙を目指す様に、精神世界があるから人間は考えるのである。ポスト人類とならなかった現人類は宇宙に進出し、ポスト人類は精神世界に生きる。
個人用情報通信端末とWeb2.0コンテンツ群は技術的特異点の先駆体であり、現代はプレシンギュラリティである。ポストシンギュラリティに於いて群体から切り離された現人類は宇宙を旅し、星々を繋ぐ存在になる。物理法則はポスト人類により解明され、その技術背景に基づき進宙した現人類は生存圏を広げることとなる。
参考文献
池田晶子「考える日々1」
神林長平「魂の駆動体」
観念論
技術的特異点
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9
複雑ネットワーク
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%AD%A6
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%A2%BA%E5%AE%9A%E6%80%A7%E5%8E%9F%E7%90%86
物質波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E8%B3%AA%E6%B3%A2
確率解釈
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A2%BA%E7%8E%87%E8%A7%A3%E9%87%88